2010年3月13日土曜日

Day43 食わず嫌い

僕にも好き嫌いというものがある。

例えば、食べ物で言うと、キムチは食べられない。あとモズクもなるべく食べたくない。寿司についてくるガリもあまり好きじゃない。
逆にムール貝の白ワイン蒸しは大好きだし、ぺヤングソース焼きそばも大好きだ。ガリはあまり好きじゃないけど、寿司自体は(ほぼどのネタも)とても好きだ。
好きなお笑い芸人もいれば、嫌いなお笑い芸人もいるし、好きな映画も嫌いな映画もある。もちろん好きな女性のタイプと嫌いな女性のタイプもある。

好き嫌いがあるってことは人間誰しもが持っている当然の感覚だし、別にそれ自体悪いことじゃないと思っている。

という一応の弁明をした上で、僕はスペインのことがあまり好きではないということを書こうと思う。
(私はスペインのことが熱狂的に好きだ。スペインのことを悪く言う奴は決して許さない!という方は読まないでもらいたい)

世界をいくつかに分けると(これはかなり強引な区分けかもしれないけれど)、僕達の日本がある東アジアから、東南アジア、中央アジア、中東アラブ諸国、ロシア、東ヨーロッパ、西ヨーロッパ、北ヨーロッパ、アフリカ、北アメリカ、中央アメリカ、南アメリカ、オーストラリアなどがある。もちろんこの中に入っていない例えばオセアニア諸島の国々なんかもあるんだけど。
このざっくりとした区分けの中で、僕が一番好きなのが(日本を除いて)西ヨーロッパだ。
イギリス、フランス、イタリア、ベルギー、スイス、ドイツ、オランダ、ポルトガル、デンマーク、そしてスペインなんかが(いくつかの国は地理的に南ヨーロッパと呼ばれる場合もあるし、歴史的や政治的区分けによって多少異なってくることもあるが)西ヨーロッパの国々だ。

スイスやドイツ、デンマークなど、まだ行ったことのない国もあるが、基本的に僕はこの西ヨーロッパの国々に対して魅力を感じている。
イタリアには世界に名を馳せる一流ファッションブランドやエキゾチックカーがあるし、フランスにも世界に名を馳せる一流の料理やワインがある。イギリスには伝統的で格式高い王室があって、紳士の国にふさわしいゴルフやテニスといったスポーツも有名だ。ベルギーもオランダも素晴らしいところをあげようと思ったらとてもここには書ききれない。それに西ヨーロッパの国々はなんとなく文化的で洗練されていて、お洒落だ!と言えば肯いてくれる人の方が多いと個人的には思っている。僕はヨーロッパに対して憧れに近い(少し大げさかも知れないが)感情を持っているところが少なからずあると思う。

でも、スペインという国だけはどうしても好きになれない。
僕のスペインに対する印象は「西ヨーロッパ諸国の中で最も粗野な国」だ。

歴史的に見ても、スペインは南米にあった3つの文明(アステカ、マヤ、インカ)を滅ぼしているし(詳細はWikipedia『スペインによるアメリカ大陸の植民地化』参照)、南米の人々に過酷な労働を強き、それでいて疫病なんかが流行して人口が激減すると、今度は南アフリカから黒人奴隷を代替労働力として持ち込んだりもしている。時代が時代とは言え、スペインはめちゃくちゃなことを平然と(かどうかは少し主観が入るけれども)やっていた。

16世紀から17世紀にかけてのスペイン黄金時代も、国内の文化や政治を育て上げた結果というよりも、どちらかと言えば、まだ未開であった南米の発見とその地域からの富の収奪によって一時的に築かれたものだったし、その後の衰退にしたって、国内の経済を支えていたユダヤ人の迫害や改宗、ムスリムの徹底した排除や新興プロテスタントの弾圧などから起きた産業・経済基盤の弱体化が大きな原因となっている。

他の西ヨーロッパ諸国だって同じような侵略と征服の歴史を持っているかもしれないが、3つの文明を滅ぼすなんてことをやったのはこの国ぐらいじゃないかと思う。

でも僕だって歴史的な理由からスペインのことが嫌いになったわけじゃない。
むしろスペインに来てみて、なんとなくこの国は粗野な感じがするなぁと思って歴史を調べてみたら、やっぱり歴史的にも粗野なところがあったという順番だ。

路上で肩がぶつかっても誰一人として謝らないし、道を譲ることはあっても譲られることは(覚えている限りでは)ないし、レストランのウエイターは無愛想だし、ZARAの店員も無愛想だし、ホテルの受付係も無愛想だし、アトレティコマドリードのサポーター連中は昼間から酒を飲んで、酔っ払って、街中で大声で歌を歌っているし(中にはこちらに絡んでくる連中もいる)、スペインに来てからというものの、あまり気持ちの良い思いをすることがなかった。もちろん彼らだって別に僕らに気持ちよい思いをしてもらおうと思って生きているわけではないので、それはそれで一向に構わないのだけれど、それでもフランスでもイタリアでもフィンランドでもスウェーデンでも、何かしら、「やっぱりヨーロッパは良いなぁ」と思わせるところがあった。

スペインに来てから親切だなと感じたのは、今のところ空港のツーリストインフォメーションのおばさんとカンペール(という靴屋)の店員さんの二人だけだし、そのカンペールの店員さんにいたってはイタリアのシシリア出身だと言っていた。やっぱり、イタリア人だ!と思った。

と、ここまで書いてみたものの、ちょっと悪く言いすぎてしまった感は否めない。ごめん。

逆にスペインの好きなところ、良い所を書こうと思う。

まずスペインブランドのZARAとカンペールはかなり好きだ。特にカンペールは大好きだ。
旅行会社に勤めていた時によく履いていたお気に入りの革靴はカンペールのものだし、今回の旅行でもカンペールのスウェードの革靴を一足買った。流石は本拠地スペインだけあって、日本で買うよりもかなり安く買えた。カンペールは細部のデザインにまで入念に凝っているところが好きだ。(例えば今回買ったスウェードの靴もソールにまでデザインがあしらわれている)もし好きな靴のブランドは?と聞かれたら、迷わずにカンペールと答えられると思う。

あとはワイン。スペイン産のワインも結構気に入っている。スパークリングワインのカヴァも美味しいし、テルモ・ロドリゲス氏のワインはどれも好きだ。
食事にしたって、スペインのエル・ブジは世界で最も予約困難な店として有名だし、その料理は(もちろん食べたことはないが)見るからに洗練されていて、粗野という言葉の対極にあるような感じがする。エル・ブジの影響もあって、近年ではスペイン料理が世界を席巻しているといっても過言じゃないし、実際、マドリッド・フュージョンという世界最大の料理のサミットも毎年スペインで行われている。死ぬまでに一度は行ってみたいと切望しているイベントの一つだ。

スペイン料理の定番、パエリアも大好きだ。
今日だって昼食にイカ墨のパエリアを食べてきた。

どの国にも良い所と悪い所、好きな所と嫌いな所があって、それはそれで仕方が無いことだと思う。

旅行者としていろいろな国を訪れると、できるだけ良い思い出を残したくて(嫌な思い出より良い思い出の方が良いに決まってる)、なるべくその国のことを好きになろうと無意識のうちに努力してしまうふしがあって、それが時として疲れに変わることがある。新しい職場で周囲に良い顔ばかりしているうちに、結局ストレスが溜まってしまうというのに似ている気がする。長い旅行をしていると、中には好きになれない国の一つや二つも出てくるものなのだ。そういう時には素直に嫌だと認めてしまってもいいんじゃないかと今回は思った。

「良い面だけを見て、良いことだけを考えるようにするんだ。そうすれば何も怖くない。悪いことが起きたら、その時点で考えるようにするんだ。」と僕は渡辺昇に言ったのと同じ科白を繰り返した。

でもやっぱりこういう批判的な日記を書くのは僕としてもあまり気持ちの良いものじゃないし、嫌な思い出よりは良い思い出を沢山持って日本に帰りたいと思っている。

毎日の(遅れることもあるが)ブログ更新も少し疲れてしまったので、スペイン滞在中は(といってもあと2日だが)、どこかの大御所漫画家のようにブログの更新を休もうと思う。

というわけで明日はブログを更新しません。

4 件のコメント:

  1. ふむふむ、そうなのか~~
    スペインこの夏にこの眼で確かめてきまっす♪
    なんかある意味楽しみだなー

    返信削除
  2. そうか、スペインに行くって言ってたね…
    ごめん。
    接した人の運もあるし、感じ方もあるから、実際にはなんとも言えませんね。是非、良い所ばかり見てきてください。

    返信削除
  3. 全然ごめんじゃないよー
    スペイン人の友達のところにお世話になるので、
    きっとまた違う印象になるのかもしれない。
    ブログ色々考えさせられて面白いよーー。

    返信削除
  4. ありがとう。
    きっと僕の方に問題があったんだと思います。
    いつだって問題は自分の方にあるもんですから。

    返信削除