2010年3月10日水曜日

Day39 赤い砂の大地


8時にワルザザードのホテルを出発し、まずはトドラ谷にあるオアシスへやって来ました。
ここにはトドラ川というなかなか立派な川(モロッコにしてはということですが)が流れていて、その水の恵みを受けて、大きなオアシスが谷底に広がっています。周りには乾いた荒野が続いていることを考えるとこのオアシスはまさに命の森といった印象です。熱帯雨林のような植物の群生が谷底に広がり、ところどころに綺麗に手入れされた緑色の畑が広がっています。このオアシスを壊さないためなのか、谷底のオアシスを避けるようにして谷の斜面に四角い土の家が建てられています。谷の上から見下ろすオアシスと奇妙な形をした村はSF映画やドラクエに出てくる辺境の村を思わせます。

このオアシスを奥へ進むと高い岩壁に囲まれたトドラ峡谷に出ます。東北地方(何県だったか?)の猊鼻渓から森をなくした様な雰囲気のところです。ここはロッククライミングのポイントになっているようで、100メートルほどもあるような高い岩壁をツーマンで登っているクライマーが何組かいました。下を流れるトドラ川も透き通った綺麗な清流で、イワナのような魚が気持ちよさそうに(かどうかはわかりませんが)泳いでいました。

トドラ峡谷の奥にあるレストランで、またしてもクスクスとタジンを昼食に食べました。
モロッコにはクスクスとタジンしかありません。そして、東京やパリで食べるクスクスやタジンの方が本場よりも絶対に美味しいと思います。


昼食の後、ドライバー兼ガイドのオマル氏と再び合流して、一路、サハラ砂漠の町メルズーガに向けて出発です。

オマル氏は信頼できるいい人で(ちょっと車を飛ばしすぎな感はありましたが)、彼はどこに行っても顔が広く、実にいろいろな人と握手を交わし、手を振りあい、僕達のことを現地人に紹介してくれます。出身はどこかのベルベル人の村だと言っていました。
ときおり日本語や英語でジョークを言うのですが、他のモロッコ人(といっても近づいてくる怪しげな観光客商売の連中だけですが)と比べると珍しく実に寡黙な人でした。


オマル氏の運転するランクルの後部座席に揺られて、またしても果てしなく続く一本道を時速140Kmで進んでいきます。彼の運転は平均して制限速度のダブルスコアです。
何度か定番のビュースポットで写真停車をしながらも、2時間ほど走ると、舗装された道路がなくなりました。ここからは何も無い荒野を前の車が作った轍に沿って進んでいきます。オマル氏のスピード狂ぶりはここに来てもまったく影を潜めず、舗装されていない荒野でも時速100Kmくらいのペースでどんどん運転していきます。僕らが追い越した車は沢山あったけど、僕らを追い越した車は一台もありませんでした。荒野の中を30分ほど走ると、眼前に隆起した砂の山が見えてきます。サハラ砂漠です。荒野と僕が呼んでいる大地は砂ではなくちゃんとした土なのに、砂漠と呼ばれる大地は(当たり前かもしれませんが)本当に砂しかありません。地球が皮膚病になったみたいな印象でした。荒野は地面にしっかりと土が張り付いているのに、砂漠は砂が地面からあふれ出し、強風に煽られて盛り上がったり、凹み落ちたりと、地面がうねっていました。荒野と砂漠の境目は不思議です。

荒野と砂漠のちょうど境目に僕達が泊まるホテルが建っていました。50,000円もするツアーに申し込んだせいか、ホテルの部屋はスイートタイプで、ベッドルームには天蓋付きのキングサイズベッドが1台とシングルサイズベッドが2台置かれていました。でも兄弟二人なので、少し虚しかったです。部屋の中に2階のテラスへと続く階段があって、テラスへ出るとサハラ砂漠が一望できました。流石は50,000円もするツアーです。




夕食前にラクダを2頭チャーターして砂漠に沈む夕日を見に行きました。
ラクダに乗るのは初めてでしたが、ちゃんとした鞍が付いていて、ガイドの人が手綱を引いてくれるので、安心でした。何も無い、誰もいない砂漠を僕と兄とガイドの3人でラクダに揺られて進んでいきます。砂の丘を登ったり下ったりしながら、見晴らしのよさそうな高い丘の下にラクダを停めて、最後は歩いて丘を登りました。砂がやわらかくなっているところと、堅くなっているところがあって、堅くなっているところを、足元の砂を崩さないように歩くのがポイントだそうです。丘の上に上ると360度、果てなく続く赤い砂の大地が広がります。遠くのほうにアトラスの山やアルジェリアとの国境線も見えました。


どこまでも広がる砂漠は雄大としか表現のしようがなく、夕日が沈む時には赤い砂の大地がさらに赤く照らされ、波打つ砂の丘が作り出す陰影は綺麗としか表現のしようがありませんでした。


夕日が沈む時というのは不思議なもので、風が止んで、音が止まり、赤紫の暗いやわらかい光に世界が包まれ、徐々に夜が世界を覆うのが感じられます。一日が静かに、そしてゆっくりと幕を閉じようとしていているみたいです。テレビを消して、エアコンを切り、パソコンの電源を落として、音をなくし、最後に部屋の電源を切って、あかりをなくして、ゆっくりとドアを閉める、そんな感じがしました。

実はパリでカメラが故障し(なんと僕のカメラが完全に壊れた2時間後に兄のカメラも部分的に故障しました)、上手く動かなくなってしまっていて、それでも、だましだまし使ってきたのですが、砂漠の壮観な景色を収めるには、力不足でした。ヒースローの免税店で新しいのを買えばよかったと後悔しています。

夜は夜で星空がとてつもなく綺麗でした。オリオン座の中に小さな星がありすぎて、最初、オリオン座を見つけられないほどでした。天の川が白い帯状にはっきりと見えて、天の川の周辺にはときどき流れ星が流れました。

夕食の時にはベルベル人のホテルスタッフがベルベルの太鼓を持ち出して、音楽を演奏してくれます。ベルベル人は実に陽気な人達で、いつまでたっても音楽を止めず、踊り続けていました。(と書いてみたものの、実際には30分くらい演奏してくれただけでした)

今日はモロッコの大自然をを全身で感じた最高の1日でした。

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