2010年2月26日金曜日
Day27 フィオレンティーナ
過去に1度、フィレンツェを訪れたことがあるのですが、この時の僕はまだあまりにも若く、内気で控えめな青年だったため、夜、一人で素敵なレストランに入って、赤ワインを飲みながらフィオレンティーナを食べたり、昼間、一人で美術鑑賞を楽しんだり、ドゥオーモ広場に面した小洒落たカフェでコーヒー片手に読書をしながら行き交うイタリア人達を眺めて、過ぎ行くゆったりとした時間を楽しむなんてことができませんでした。
2回あった夕食はどちらもマクドナルドで済ませ、昼食にはお世辞にも美味しいとは言えない切り売りのピッツァを食べ、日中は少しだけ外を散歩したけれど、いくつかの名所を見た後、すぐにホテルに戻って、日本から持ってきたノートパソコンを開いて、ネットサーフィンをしたり、DVDを見たりして、時間を潰してしまいました。今思えばかなり苦い思い出です。
後になって、このときの失敗を繰り返さないために、僕は一人で素敵なレストランに入る練習をしたほどでした。
このときもペルージャの友達に会いに来ていて数週間をペルージャで過ごした後、ミラノから飛行機で日本へ帰るまでの間の数日間を一人で過ごさないといけなかったので、なんとなく有名なフィレンツェに立ち寄ったのでした。
ホテルに引きこもってしまったのは僕が内気だったせいもあるのですが、それと同じくらいフィレンツェの街も僕に対して冷たかったように感じました。人々はなんとなく無愛想で、足早に道を行き、寄ってくる連中はといえば、怪しげな客引きや物売り、募金活動の勧誘屋や物乞いだけでした。
このときは、ペルージャに戻りたい、ペルージャには友達も家族も美味しい食事もワインだってなんだって揃ってたんだからって何度も思いました。
今回もミラノからヘルシンキへ行く飛行機に乗る間の数日間をフィレンツェで過ごすことにしました。
一応ウフィッツィ美術館とアカデミア美術館を見ておきたかったというのがフィレンツェ滞在の主だった理由です。
でも、フィレンツェに到着した日は、6月の長い雨に打たれた後の地面のように体が疲れて重く、だるくて一歩だってホテルの外に出る気が起きませんでした。結局またしても、夕食は近くのマクドナルドでテイクアウトをして、ホテルの部屋で食べました。
なんだかフィレンツェが僕に意地悪をしているように思えました。この街は僕のことを歓迎していないんだ。なんだって、この街に来るたびに体調が悪くなったり、気が滅入るようなことが起こるんだ!って。
それでも、今日になると悪かった体調もいくぶんか戻り、日中は兄と二人で昼食を食べてからウフィッツィ美術館に行きました。
だけどもイタリアの美術館ってどこも宗教画しかないから面白みってもんがないです。
ウフィッツィ美術館を出た後、ジェラートを食べながら街を歩き、小さくて可愛らしい店を見たり、お土産物屋の屋台を冷やかしながらホテルに戻りました。
ホテルに戻ると、今度は兄がダウンしました。
兄は体調が悪く、夕食はいらないと言うので、一人で夕食を食べにでることにしました。
ここぞとばかりに、数年前に出来なかった、一いかにも一人では入りにくそうなレストランに入って、ワインを飲みながら旨いものをたらふく食べてやろうという気が起きました。日中、下見しておいたいかにも一人では入りにくそうなレストランへ足早に向かいました。
これはフィレンツェに対する僕のささやかな復讐です。
IL LATINIというレストランに行きました。
このレストランはフィオレンティーナが有名なレストランで、この日は地元の人や観光客でごった返しでした。レストランに着くと、すでに入り口に人が溢れていて、中へ入っていく人や外でタバコをふかしている人、入り口近くのバーカウンターでお酒やコーヒーを飲んでる人など、いかにも地元の人気店といった様子です。
「一人だけど、席座れる?」と聞くと「一人?」と聞かれて「そうだよ。」と言うと奥へ続く通路の脇の角の席へ案内されました。6人がけの少し大きなテーブルで、すでに地元の人らしき客が二人席に着いていました。どうやら相席になるようです。先に座っていた客に「ボナセーラ」と言って、僕も席に座って、メニューを貰いました。
さすがに一人で1kgもあるステーキは食べられないので、豆とトマトのスープと牛ほほ肉の赤ワイン煮込みを注文しました。ウエイターのおじさんが、テーブルにおいてある、キアンティクラシコというワインを指差して「ワイン、飲んでいいからね。」と勧めてくれるので、「ありがとうございます。」と言って、一人でワインをコップに注いで、勝手に飲みました。
フィレンツェでは適当にワインを飲んで後から目分量でだいたいの料金を請求してくるらしいという情報を兄から聞いていたので、きっと、あとで適当に勘定してくれるんだと思って、テーブルに置いてあるワインを数杯飲みながら、食事を食べました。
途中で、僕の向かいの席にイタリア人の男が、彼もまた一人で食事に来たのですが、座って、常連客なのか、メニューも見ずになにやら適当に注文していました。
イタリア料理のメニューには大まかに言うと、アンティパスティと呼ばれる前菜とプリモピアッティ(第一の皿)と呼ばれるパスタやリゾット、ニョッキなどの料理とセコンドピアッティ(第二の皿)と呼ばれる肉料理、魚料理、そしてドルチェ(デザート)があります。
なんとなくですが、アンティパストとプリモピアット、アンティパストとセコンドピアットまたはプリモピアットとセコンドピアットというように、最低二皿(またはセコンドピアットなら一皿だけでも大丈夫な気もしますが?)頼まないといけないような気がします。別にプリモピアット一皿だけでもいいんだと思いますが、なんとなくプリモピアットだけ食べて出てくるのは気が引けます。
ちなみにスープはアンティパスト、牛のワイン煮込みはセコンドピアットでした。
そのイタリア人の男が注文を終えると、まずアンティパストが4皿出てきました。プロシュート、トスカーナサラミ(これが旨そう!)、ブルスケッタ、オイルサーディン。これだけでもかなりのボリュームで料金もたぶん25ユーロはしてると思います。僕は「あぁこういう頼み方もあるんだな。前菜を数種類つまんでワインを飲んで帰るんだな。」と思っていると、続いてパスタが運ばれてきました。これもなかなかのボリュームです。「それはそうか、アンティパスティだけなわけがないな。」と思っていると、彼はパスタもぺロっと食べ上げ、続いてなんと!フィオレンティーナ!が運ばれてきました。フィオレンティーナはフィレンツェ名物のTボーンステーキで骨を含めて1kgあります。お店によってまちまちですが、大体1kgで用意しているところが多いです。骨を抜いても800gはありそうです。この店では40ユーロくらいだったと思います。先に来ていた二人の客は二人でフィオレンティーナを一枚食べていました。僕も兄と二人でお腹が空いていたら挑戦したかもしれません。なんたって、我らが浜松が誇るハンバーグの名店、炭焼きレストランさわやかのげんこつハンバーグだって250gしかないんです。
でも、その男は運ばれてきたフィオレンティーナを一人でもくもくと食べ始めました。アンティパスティ4皿食べて、パスタを1皿食べた後に、1kgのステーキをもくもくと食べ始めるのです。
途中、何度かペースが落ちて、少し苦しそうにしていましたが、それでも順調にたいらげ、最後は骨に付いた肉をしゃぶっていました。
やっぱり西洋の奴らは食べる量が違います。体がでかいのも納得です。
食後にリモンチェッロを注文すると、リモンチェッロと一緒に、ウエイターのおじさんが「ビスコッティ」と言ってお酒とビスケットを「これは無料だから」と言って置いていきました。周りを見てみると、ビスケットをそのお酒に浸しながら食べているので、僕も見真似をして同じように食べてみました。調子にのってリモンチェッロなんか、頼まなければよかった。結局、アルコールを摂りすぎてしまいました。
いざ会計をお願いすると、ウエイターのおじさんと一緒に会計係の別のおじさんがやってきて、ウエイターのおじさんが会計係のおじさんに僕が食べたものを告げると、会計係のおじさんが勘定書を書いて、僕に渡すのですが、明らかにリモンチェッロとワインが入っていないので、「リモンチェッロは?ワインは?」と聞くと、片目をウインクして「ワインはもともとフリー、リモンチェッロは日本人だから無料にしとくよ。」と言ってサービスしてくれました。
ご馳走様でした。
フィオレンティーナの写真が無いのが残念です。
かなり旨そうなステーキだったので、次来るときには必ず食べたいと思います。
登録:
コメントの投稿 (Atom)
食い物に関する日記だけやけに手がこんでるな。
返信削除僕は今日、新宿に焼肉を食べに行きます。最近話題のおしゃれ焼肉屋に、彼女ではない可愛い女の子と二人で行きます。
でも僕は新宿よりフィレンツェのほうが好きです。
この前初めて行った時、フィレンツェの街はやさしかったです。大晦日前だったからかも知れません。
食い物は命の源だからな。大切なことだしな。
返信削除僕は日本の漬物と小鉢に入ってるような料理と、あと韓国のあの赤くてすっぱい臭いのする漬物以外はだいたい何でも食べれるから、外国に旅行に来ても困るどころか、行く先々の新しい味付けに舌の神経を尖らせては食事を楽しんでるんだよ。
彼女ではない可愛い女の子と食事に行くのは構わないが、ほどほどにしないと、どこかでタバコの箱か何かを投げつけられるぞ。