2010年2月20日土曜日
Day22 今度はちゃんと予約してくるのよ、坊や。
なぜか朝から体調が優れず、8時に起きて、僕と兄の分の朝食を作って食べ終えた直後、深夜に襲ってくる耐え難い空腹に似た耐え難い絶対的な眠気に襲われ、そこから2時間ほど眠ってしまいました。11時過ぎにようやくベッドから抜け出し、歯を磨いたり、顔を洗ったり、身支度を整え、12時少し前にアパルトマンを出発しました。
旅行の22日目にして、疲れがたまっていたのか、朝の体調の悪さは、原因不明でした。
こういうものは気を付けようにも気を付けどころがわからないので、出たとこ勝負でやってきたときに即座に対応するしかありません。今日は朝食の後だったので、かなりラッキーなケースだったと思います。とりあえず近所のスーパーに行って、レッドブルを2缶買いました。
(またしても)パリの情報サイト、カイエ・ド・パリで調べた、クレープリーに出かけ、昼食にガレットとシードルをとることにしました。モンパルナスの近くにあるクレープリーだったので、歩いて行きました。僕は定番のハムと卵とチーズと玉ねぎのガレットを注文し、兄はトゥールーズソーセージのガレットを注文しました。玉ねぎがかなり濃い飴色に炒めあげられていて、美味しかったです。お店の名前はクレープリー・デュ・ヴュー・ジュルナル, Creperie du Vieux Journalと言います。
一度、アパルトマンに戻って、午後の予定を立て直し、夕食に行くビストロの候補を2つピックアップして、オルセー美術館に行くことにしました。まったくパリにはカフェとビストロと美術館しかないんじゃないかって気になります。
オルセー美術館はもともと印象派美術館だったので、印象派の画家達(モネ、マネ、ルノワール、ピサロなどなど)の作品が多く展示されています。印象派好きにはたまらない美術館なのですが、不幸にも僕はあまり印象派絵画が好きではないので、スルーです。一番古いのがバルビゾン派で、印象派、そしてゴッホ、ゴーギャン、セザンヌを経て、象徴主義の画家あたりまでが展示されています。他にもロダンの彫刻やアールヌーヴォー家具などが展示されています。インテリア好きにたまらないのがアールヌーヴォーのコーナーです。詳細を一つずつ取り上げていくとまたしても長くなってしまうので、オススメを一つだけ書いてこの美術館についてはお終いにします。僕の一番のオススメはギュスターヴ・クールベの「画家のアトリエ」です。大きなキャンバスの右側にクールベの画家仲間や自由恋愛を象徴する男女など、理想の生活を送る人々が描かれ、画面の左側には金持ちや貧乏人、お金や社会に縛られる人々が悲惨な姿で描かれています。真ん中に絵を描いているクールベ自身が描かれていて、画家がこの二つの相反する世界を繋ぐ役割を演出しているそうです。かなり挑戦的で示唆的な作品です。大きな作品なので、見ごたえもあります。
オルセー美術館を出ると夕方の6時過ぎになっていて、たそがれ時でした。遠くの空が橙と紫色に染まり、上空の厚い雲が黒い陰になってパリの街に襲いかかろうとしているところでした。セーヌ川沿いを散歩し、僕のより少しだけ高性能な兄のカメラでパリの街を撮影しました。兄のカメラはソニーで、僕のパソコンはSDカードしか読み込めないので、どこかでコネクタを買って、撮った写真をアップしたいと思います。
セーヌ川をエッフェル塔方面に歩き、探しておいたビストロへ向かいます。
一軒目はシェ・ラミ・ジャン, Chez L'Ami Jeanというお店で(またしてもカイエ・ド・パリで探したのですが)こう紹介されています。
”今パリで一、二を争うビストロと聞いて、7区にあるシェ・ラミ・ジャンに行ってきました。 ~中略~ バスク料理がスペシャリテだというので素朴な地方料理を想像してメニューを開いたら、洗練された内容のようでびっくり。しかも3品とも6種類以上の選択肢があり、あれもこれも食べたいと迷ってしまうほどです。でもそれで驚くのはまだ早かった・・・時としてメニューの文章からは想像がつかない姿でやってくるその料理は、創造性と意外性でいっぱい。見た目の美しさも完璧です。庶民的とも言える価格で、こんなレベルの高い料理を提供するシェフには頭が下がります。 ~再び中略~ 今回注文した料理 前菜1:ブイヨンでゆでたラビオリ、仔牛肉の煮込み 前菜2:かぼちゃのラザニア、オマール海老添え メイン1:豚の胸肉、頬肉、耳とレンズ豆の煮込み メイン2:ヒメジのグリル、クロックマダム風、クスクスサラダ添え(付け合せのマッシュドポテトがまた美味!) デザート1:レモンのクリーム、ピスタチオのジュレ デザート2:チョコレートとバニラのマーブル”
パリで1、2を争うビストロ!!!だそうです。ここは行っておくしかありません。
エッフェル塔から5分くらい歩いた裏路地(カイエ・ド・パリの取材力には驚かされます。ほとんどのお店が一本は入った裏路地にあるのです。そして例外なく旨い!)にあって、外はすりガラスで中の様子が見えないようになっています。メニューをチェックして、勇気を出していざ店内へ。外観に比べ、内装はアットホームな感じです。席に着けないかと思って、店員さんを探すと飛び切り綺麗なフランス人マドモアゼルがやってきて、「ブゥ…なんとか…リザヴェ?」と聞いてきます。リザヴェ?きっと予約のことだと思って、「ノン」と言うと、彼女は少し目線を上に上げて、真冬の月ような無表情な笑いを浮かべ、さっと後ろを振り向いてお店の名刺を2枚取り、僕に渡しながらフランス語で何か言いました。フランス語はわからないのですが「今日は満席よ。今度はちゃんと予約してから来るのよ、坊や」と言われたことはわかりました。あしらわれるように、食事を断られたのですが、彼女があまりに美しかったことと、ジェームス・ボンドの傍らにでもいそうな洗練された仕草のせいで、嫌な気なんてこれっぽっちも起こらなかったどころか、なんだかすごく貴重な体験が出来たような気分にすらなってしまいました。自分で自分が気持ち悪いです。
結局二軒目のお店にはすんなり入れました。オー・ボン・アキュイユ, Au Bon Accueilというビストロです。かなりシックなお店でした。ビストロ?レストランじゃないのかという印象です。
お店のドアを開けて、立っていた中東系のウエイターに「ヌ パール パ フランセ メ(フランス語話せないんですが)」と言うと、日本語で「大丈夫ですよ。どうぞ」と迎えいられました。かなり流暢な日本語で、尊敬語や謙譲語も使いこなすところには脱帽の思いでした。メニューを一通り説明してもらって、僕は前菜に栗とセロリのポタージュ、兄はサーモンのタルタルを、メインに僕はタラのポワレ、兄は子牛のステーキ、赤ワインソース、デザートに僕はクレープのフランベ、兄はミルフィーユを注文しました。僕の食べたタラのポワレと兄の食べたサーモンのタルタルがかなり美味しかったです。特にサーモンのタルタルには青海苔が使われていて、卵で作ったムースの味と青海苔の風味が最高にマッチしていました。どうも少し前から日本料理ブームで日本食材を使うところが多くなってるそうです。このビストロは味ももちろん美味しいのですが、料理の出し方がまたお洒落です。最初に出てきたスープは、まずクルトンとパンチェッタとハーブだけが載ったスープ皿が出てきて、ウエイターがボナペティ(召し上がれ)と言った後に、別のウエイターが大きな鍋を抱えて、スープを注ぎに来てくれたり(危うく、クルトンとパンチェッタを先に食べてしまうところでした)、デザートのクレープも先に何の変哲もないクレープが運ばれてきて、後からウエイターが火のついたブランデーかカルヴァドスのようなお酒をひしゃくのような銅のレードルに入れて持ってきて、火がついたままのお酒をクレープにかけてくれました。
アペリティフにキールを、食事をしながらシャブリを飲んで、デザートと一緒にコーヒーまで注文して、一人44ユーロでしたので、料理内容を考えるとかなりリーズナブルだったと思います。
今日はパリ最後の夜だったのですが、最後の夜にふさわしい食事でした。
これで今度から「パリの美味しいレストランを知ってるから、旅行に行こうよ」と好きな女の子を誘うことができます。
もう少し大人になって、顔が渋くなったら、一軒目のシェ・ラミ・ジャンに行こうと思います。今度はちゃんとリザヴェってから行かないといけません。
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