2010年4月8日木曜日

Day67 グレートスピリッツ


ブリティッシュコロンビア大学内にある、UBC人類学博物館に行ってきました。
UBC人類学博物館は主に北西アメリカのネイティブアメリカン研究とその人類学的資料の展示をしています。

いままで人類学というものにはさして興味がなかったのですが、メキシコの国立人類学博物館が意外と面白かったため、バンクーバーにも人類学博物館があると知って、行ってみることにしました。

人類学博物館の面白さは、その地域地域の土着の宗教観を垣間見ることができるところです。

今では世界中にキリスト教やイスラム教、仏教などの大宗教が広がっていて、特に今回僕が旅行している国々ではキリスト教徒が大多数を占め、政治も経済も生活もキリスト教的価値観に染まっているところが多いのですが、一口にキリスト教(とは言えその中にもカトリック、プロテスタント、英国教会などいろいろありますが)と言っても、それぞれの国々で微妙に信仰の仕方やその度合いが違っていました。
例えばイタリアやスペインは思いっきりカトリックで、やはりカトリック的価値観に基づいて人々は暮らしているように感じました。純カトリッククリスチャンです。流石はカトリックの総本山とその親戚の一族が長いこと支配していただけはあるなって感じです。
でもフィンランドは違いました。歴史的にキリスト教が入ってきたのが15世紀ごろと遅かったことと、カレワラというフィンランドに昔から伝わる土着の神話(シャーマニズム的なもの)や北欧神話など、以前からの宗教観が根強く残っていて、未だに人々の心のどこかにそういった宗教観が残っているんじゃないかとフィンランドでは感じました。どう感じたかはこのブログのフィンランド編を見てもらえればわかります。
今回の旅行では行きませんでしたが、韓国人のキリスト教も古くからの宗教である儒教の上にのっているため、目上の存在に対する忠誠心や忠義心といった感覚が他の国のキリスト教徒より強く、よりストイックな教徒が多いそうです。
僕達日本人も、一応仏教徒(僕もそうです)ですという人が多いと思いますが、やはりインドや東南アジアなどの仏教発祥の国々の仏教徒とは違って、僕ら日本人の感覚は仏教というよりも、神道である日本神話的な感覚、シャーマニズム的な自然を畏れ敬うといった感覚のほうが強いんじゃないかと思います。(あるいはその両方が混ざり合っている)

キリスト教やイスラム教(についてはあまり知りませんが…)、仏教というのはなんとなく、秩序やルールを便宜的に保つために皆が揃って着ている仕事用のスーツみたいなもので、その土地に元からあった土着の宗教観こそ、そこに住む人々の体そのものじゃないかって思います。

とは言ってもカナダのように移民ばかりで形成されている国は土着の宗教観が残りにくく、移民と一緒に入ってきたそれぞれの宗教観が混ざり合って、新しい価値観を作り出しているようですが…。UBC人類学博物館にまとめられている北西アメリカに住んでいたネイティブアメリカン達の宗教観は今ではかなり薄れてしまっていて、ほぼ絶滅してしまったような感じです。


ちなみに、北西アメリカにもともと住んでいた先住民達の宗教観は日本と似ているシャーマニズムでした。それも中央アメリカの先住民とは違い、石ではなく木を使った生活をしていて、自然を切り開いて都市を造るというような思考回路はなく、森の中で動物の命を尊いながら狩りをして、人間も大いなる自然の循環の中の一員という自覚を持ちながら暮らしていたそうです。
彼らが祭の時に使うレリーフも太陽や月といった絶対的な存在ではなく、ビーバーや狼、熊やコヨーテ、鷲やハチドリなど、彼らが狩りの対象としていた森の動物達でした。

この博物館では無料のガイドツアーを行っていて、僕らのガイドさんが「ネイティブアメリカン達は自然の循環の中に自分達も含まれているという自覚を持って暮らしていました。そのためむやみに動物を殺すことはしませんでした。たとえ動物を狩るときも、苦しませずに殺す手段を心得ていて、さらに殺す前と殺した後には必ず感謝の祈りを奉げていました。楽しみのために動物を狩ることは決してなく、自分と家族が生きていくためだけに動物を殺していました。人間は死後にグレートスピリッツと呼ばれる自然界の大きな流れの中に還るということが多くの部族の間で信じられていて、自然循環というものを何よりも大切にしていたそうです。このUBCでも環境に配慮した建物が10年以上も前から建設されるようになり、カナダは環境問題にいち早く取り組む国となっているのですが、そういったことも先住民達の文化をどこかで受け継いでいる結果なのかもしれません。」とまぁだいたいそんな感じのことを言っていました。

この後はあとラスベガスとサンフランシスコとハワイが残っています。
ハワイにも人類学博物館ってあるんでしょうか。もしあれば覗いてみようと思います。

◆今日の一冊
シャーマンキング 完全版 1(ジャンプコミックス)
武井 宏之 (著)

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