2010年4月5日月曜日

Day63 真実のキューバ

キューバの真の姿を見たくなった僕は、昨日までと打って変わって積極的に攻勢に転じることにしました。実は昨夜、カンクンで知り合った「世界の国からコンニチワ」ブログの作者の坂元君が合流し、今日は二人で市内観光をすることにしました。坂元君はいわゆる観光地にはあまり興味がないらしく、より本物のキューバを感じたいとのことでした。昨日、僕が感じたキューバの違和感について彼に話をしたら、彼のテンションは一気に下がり、深く落ち込むと共に、そんなはずはない、ちゃんと自分の目で確かめるんだと言って、僕達は今日一日、日本人的感性を脱ぎ捨て積極的にキューバ人と関わりあうことを誓い合いました。


まずは広場で短距離走の測定をしていたキューバ人中学生の集団にアタックです。
先生と思われる男性に向かって「Hola!」と言うと、向こうも気さくに「Hola!」と返してくれます。ここまでは普通です。その後、生徒達に「Hola! Soy japonés.」と言って、空手の型みたいなことをすると、盛り上がりました。ここぞとばかりに、ジェスチャーで「俺も走りたい。競争しよう。」というようなことを伝えると、なんと先生が快く応じてくれました。少し大きな黒人の男の子と小さな黒人の男の子が一緒に走りたいといって、3人で勝負しました。結果、僕はスタートのタイミングがわからず遅れてしまったため、大きな黒人の男の子(男の子といっても高校生並みの体格)には勝てず、2着でした。その後、生徒達と少しだけ打ち解けて、最後に皆で写真を撮りました。ほとんどの子供は純粋で良い子だったのですが、数名の男子生徒は「金をくれ」とせびってきました。「ごめんね。」と言ってお金はあげなかったのですが、結構打ち解けたと思った後だったので、すこしショックでした。やはり子供たちも飢えているのかなと思わされました。それにメキシコ人と比較すると、メキシコ人の方が無邪気で可愛げがあります。


その後、道端でキューバ人男性が声を掛けてきました。でも向こうから声を掛けてくるキューバ人男性は決まって「コヒーバ(というキューバ製の葉巻)はいらないか?安く売ってあげるよ。」という偽葉巻売りか、そうでなくて、いろいろキューバのことを話してくれたり、日本に行きたいとか、日本に友達がいるというような世間話をしたとしても、必ず最後には「食べるためのお金をくれないか?」と言ってきます。食べ物は配給を受けていて不足してないんじゃないの?と思いながら「申し訳ないけど、お金はあげられない。」と断り続けました。

道を歩いていたキューバ人女性に声を掛けてみようということになり、映画トレインスポッティングのワンシーンでレントンがディスコの前でダイアンをナンパするときのようなテンションで通りすがりのキューバ人女性に声を掛けてみました。最初、道を聞いて「よかったら一緒に行かない?」と言ってみたのですが「それは、ちょっと…。仕事があるから。」とあっさり断られました。笑 まったくキューバまで来て何をしてるんだか…。それもこれも真のキューバを見たいという純粋な探究心からでた行動なのですが。結局、写真を一緒に撮ったのですが、やっぱりメキシコ人やアメリカ人と比べると少し控えめな感じでした。いわゆるラテンのノリというやつは感じられませんでした。ここでも昨日感じた男女の仲保守的説が再び浮上しました。

その後、道行く人や店員さんと少し会話をしたのですが、やはりぎこちなさがありました。キューバ人のほとんどが英語を話さず、僕達もスペイン語をほとんど話せないので、上手くコミュニケーションが取れないということもあるのですが、やはりメキシコ人と比較して、あらゆる面で保守的でした。

カナダ人の友人や浜松在住のキューバ人男性が言っていた「道端やカフェで声を掛けたら、みんな快く応じてくれるよ。」というのはどうやら間違いであったと思わざるを得ないようです。


 ただ、旧市街の中心部にある公園で野球談義をしているおっさん達だけは違いました。彼らが醸し出していた空気こそきっと本当のキューバの空気だと感じました。
ご存知の通り、キューバでは野球が大変人気で盛んなのですが、僕が滞在していた期間にはちょうど野球リーグのチャンピョンシップの試合が行われていました。キューバ野球のチャンピョンシップは日本のプロ野球の日本シリーズと同じような仕組みで、先に4勝をあげたチームが優勝となります。今年はハバナのチームとサンタクララのチームが争っていたのですが、この日までの試合結果は3対3でした。なので今夜がキューバ野球にとって、そしてハバナチームのファンにとって最も重要な日だったわけです。そんなわけで公園には大の大人達が集まって、ものすごい形相で野球談義をしていました。きっとどっちのチームが勝つとか、あいつは昨日良いプレーをしたとかしなかったとか、そういったことを話していたんだと思いますが、あまりの白熱ぶりに、最初、喧嘩でもしてるんじゃないかと思ったほどでした。でもすぐにみんな笑顔になって肩を抱き合いながら、はっはっはと笑い合っては、また喧嘩でもしているような真剣な談義が始まります。これの繰り返しでした。この野球談義だけは、ラテンの情熱を感じさせてくれるものでした。

結局この日もキューバ人に対する僕の印象は昨日とあまり変わらず、観光を終えて、ホテルへ戻りました。

ホテルに戻るとオーナーのアニアが談話室にいたので、彼と少し話すことにしました。
僕がこの2日間で感じたことを話したのですが、僕が予想していた、キューバ人は観光客と積極的に関わってはいけないのではという説は間違っているようでした。彼らがあまりフレンドリーでないのは、まず英語が話せないことと、ハバナは大都会だから人々は他人をあまり気にせず暮らしているというようなことを言っていました。昔ながらのキューバ人とは少し違うとのことです。うーんと、少し納得し難い答えでしたが、キューバ人はもともとそれほどオープンじゃないんだということにしておこうと思いました。
配給制度についても少し教えてもらいました。例えば米や野菜は充分な量をもらえるそうですが、肉や魚は足りないそうです。配給で食べていくことはできるけど、満足ではないと言っていました。
居住制限や旅行制限なども教えてもらったのですが、やはり資本主義の国の人々と違って、制限があり、貧乏な生活をしているようで、そのことに不満を感じているキューバ人も多いそうです。「キューバはこのまま社会主義を続けていけるのか?」という質問には「それはわからない。でも少しずつ変わっている。」と言っていました。

昨夜、一緒に食事をしたドイツ人夫婦が「この国が10年後どうなるのか興味深い。」と言っていたのですが、僕もそう思いました。10年も経てばもしかすると政策転換が起きているかもしれません。

ホテルに戻って一休みしていると、もう一人、カンクンの宿で出会った陽平君がもう一日遅れてやってきました。3人で外で夕食を食べ、ホテルに戻って談話室のテレビでその野球チャンピョンシップの中継を見ました。キューバの野球は夜8時から始まって、なんと深夜2時まで続きます。同じホテルに滞在していたオーストリア人のマックスとブラジル人のガブリエル、ホテルのオーナーも混ざって、みんなで観戦しました。ゲームの進行がかなり遅いペースで、いらいらするのですが、それでもチャンピョンシップだけあって、かなり白熱した試合になりました。ハバナのチームが点を取ると、外ではどこからともなく歓声があがります。「今日ハバナが勝ったらみんなでパーティーだ。外に飲みに出掛けよう。」と言い合いながら試合を観戦しました。結果は10回の裏のサンタクララの攻撃を0点で押さえ、見事ハバナのチームが優勝しました。このときはもうハバナの町が何かから開放されたかのように盛り上がり、喜びで街中が溢れかえっていました。僕達もようやくキューバ人の本当の姿を目にすることができる!と思って、通りに飛び出し、キューバ人達と肩を抱き合って、チャンピョンになったことを祝いました。みんなで勝利の雄たけびを上げ、車のクラクションを鳴らし、街中のいたるところで踊りました。

このとき僕らはキューバ人がようやく心を開いてくれたことと、すこし酔っ払っていたこともあって、かなり気が緩んでいました。

そして、事件は起きたのです…。



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それでは。

2 件のコメント:

  1. 有料登録って!!笑
    すごく気になります。
    いつかおしえてください…

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  2. おお!久しぶりです。
    本当はこの話で登録料880円取るつもりでいたんだけど、田中さんには特別に無料で教えてあげます。それじゃあ、また。そのうち。

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